柔らかい日差しに春の訪れを感じる3月は、人事異動や昇進など、社会生活の面で大きな変化を迎える季節です。
新たに始まる日々に期待が膨らむ一方、変化には不安や心配ごとがつきもの。
年度末ならではの忙しさ等も加わって、普段よりストレスをため込みやすい時期であるとも言えます。
そんなときにこそ気をつけたいのが、心の健康(メンタルヘルス)。
忙しさや不安は目には見えないストレスとなって、あなたの身体にも悪影響を与えることがあります。
●ストレスはメンタルヘルスや身体の不調をまねく
ストレスというと心労や過労など、嫌なことや辛いことをイメージする人が多いかもしれませんが、嬉しいことや楽しいことも含めて、日常のさまざまな出来事がストレスの要因になります。
たとえば、職場では「人事異動」「昇進」「長時間労働」「人間関係のトラブル」、プライベートでは「住環境や生活の変化」「結婚や出産」「家族の病気」などです。
適度なストレスは人間的な成長を促すものですが、ストレスが過剰になると、メンタルヘルスの不調をまねくだけでなく、身体疾患のきっかけになることもあります。
たとえば強いストレスが長く続くと、身体を安定した状態に保つように働く自律神経や内分泌系に異常が生じて血管に負担がかかり、血管病のリスクが高まることが知られています。
ストレスが血管に与える悪影響
1.自律神経・内分泌系の異常が代謝機能を乱す →・血圧や血糖値が上昇する ・コレステロールなどの血中脂質の異常が起こりやすくなる2.血液中の赤血球が増加する →心筋梗塞や脳卒中の原因となる「血栓」ができやすくなる |
●強いストレスは心筋梗塞や脳卒中の引き金に
恐ろしいのは、強いストレスは、時に心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気の引き金になることがある点です。
たとえば何かの試験を受ける際などには、脈が速くなったり、血圧が上がったりしますが、これは「失敗しないように」という心理的な刺激が脳から心臓に伝わるために起こるものです。
軽いストレスでもこうした身体変化が起こるのですから、特に動脈硬化症や心臓病といった持病のある人が強いストレスを受けたときに、脈拍が増加し、血圧が急上昇して、狭心症発作(胸痛)や心筋梗塞を起こすケースもあります。
また、脳卒中の最大の要因は高血圧なので、やはり強いストレスが発症の引き金になることがあります。
●ストレスを上手に軽減して、血管病の予防につなげよう
ストレス対策の基本は、まずは自分のストレスに気づくことです。
ストレスによって現れる心身のさまざまな変化を「ストレス反応」といい、表2のように身体面・心理面・行動面に現れることがあります。
ストレスによる主な症状(ストレス反応)
身体面の変化
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心理面の変化
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行動面の変化
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身体疾患
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精神疾患
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資料:厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
自分の「ストレス反応」に気づいたら、休養や気分転換をするなど早めのセルフケアでストレス解消を促すことが、メンタルヘルス不調の予防、さらには血管病をはじめとした身体の不調を防ぐことにもつながります。
[監修]新小山市民病院 理事長・病院長 島田 和幸
引用:全国健康保険協会